SANYO DENKI TECHNICAL REPORT No.9 May-2000
特集  

小容量OFF-LINE UPSの開発

関 知昭
Chiaki Seki

依田 英明
Hideaki Yoda

松尾 英昭
Hideaki Matsuo

市川 茂生
Shigeo Ichikawa




1. まえがき

近年の地球環境問題から装置の省エネルギー化や小型化に対する市場要求が高まってきた。その中でも省エネルギー化の要求により常時インバータ給電タイプUPS(ON-LINE UPS)から常時商用給電タイプUPS(OFF-LINE UPS)による対応が必要となった。そのような背景のなか、ラックマウントに対応したUPSの需要が高まってきたため、このたびサーバ専用UPSとして装置容量2kVAのOFF-LINE UPS(以後本UPSと記す)を開発した。

開発に際しては、装置の高効率化、コストパフォーマンスの向上、操作性、保守性と安全性に主眼をおいた。



2. 特長

2.1 19インチラック専用UPS

サーバなどネットワーク関連機器の増加により19インチラックへ搭載する需要が増えてきた。そのことによりUPSも19インチラック内に他の機器といっしょに実装する必要性が高まってきた。

本UPSは図1に示すように装置の高さを4U(1U=44.5mm)とし、19インチラックマウントに搭載できる専用UPSとして開発した。

2.2 高効率

通常運転時は商用電力をそのまま出力しているため、装置の内部損失が少なく、運転効率は96%と高効率である。

また、絶縁トランスを削除したトランスレス方式のため停電バックアップ時にも高効率で運転できる。

2.3 双方向動作

従来のOFF-LINE UPSはインバータ回路がコールドスタンバイであったため、回路の故障が停電するまでわからないという欠点があった。

本UPSは主回路を双方向動作させることにより、通常時と停電時に共通の回路がその役割を替えて常に動作するようにしている。これにより従来のような欠点がなく、装置の信頼性が向上している。

2.4 フルレンジ対応と正弦波出力

本UPSは100V系、200V系両入力に対応しているため、ユーザは既存の配電設備を有効使用することができる。

また停電バックアップ時のインバータ出力波形は正弦波とした。これは最近の負荷側機器が高力率コンバータ方式を採用していることから、矩形波出力型UPSに接続した場合は、その動作が補償されないためである。

2.5 保守性・安全性

24時間稼動するコンピュータ機器は、UPSの保守・点検時に給電を停止させられない場合が増えている。またラック搭載型機器の場合は装置を簡単にラックから取り外すことはできない。

このため、本UPSは図2に示すように内部構成品のすべてをユニット化し、さらにサービス員が一人で作業できるように各ユニットの質量を約20kgとした。またバッテリユニットはユニット単位の電圧を安全電圧以下(≦DC60V)にするため2分割構造とした。これによりサービス員は負荷側への給電を停止することなく、装置の前面より安全かつ、容易にバッテリユニットやインバータユニットを取り出すことができる。

装置の前面カバーが開けられた場合、人身の安全確保のため、バッテリ回路を電気的に遮断した。また、バッテリ交換時に本体との接続忘れを防止するため、バッテリユニットが接続されていない状態では警告することにより、ヒューマンエラーを未然に防止することができる。

万が一の故障などによるインバータユニットの交換も、保守用ブレーカを投入することにより負荷側への給電を停止することなく行うことができ、さらにプラグイン方式を採用したことによりホットスワップもできる。

2.6 メンテナンス費用の削減

寿命部品であるバッテリは5年寿命品を選定した。また冷却ファン、電解コンデンサについては長寿命品を選定することにより、10年間交換不要とした。これにより交換などにかかるメンテナンス費用の低減を図った。

2.7 表示

本UPSは、ラック実装時においても装置の状態を認識しやすくするため、LEDによる状態表示を採用した。(図3に示す。)これにより専門のオペレータでなくても装置の状態や異常をすばやく確認することができる。また、通常運転時および、停電バックアップ時の負荷電流をレベルメータで表示し、さらにバッテリの充電レベルおよび、バッテリ残量もレベル表示することにより、ユーザがUPSを適正な状態で使用できるよう設計した。

2.8 インタフェース

本UPSには図4に示すように装置の状態信号用として接点信号インタフェースを標準装備しており、UPSの情報をコンピュータ側に送っている。これによりユーザは遠方より装置を管理することができる。

インタフェース部は装置主回路から強化絶縁(絶縁耐圧≧AC 3kV)を施し、電気的な安全性についても考慮して設計した。


3. 回路構成

3.1 電気的特性

本UPSの諸特性は表1のとおりである。

3.2 回路構成

回路系統図を図5に示す。

本UPSは、整流器、インバータ、充電器、DC/DCコンバ-タ、バッテリおよび直送回路を組み合わせたシステムとなっており、通常は交流入力電源を負荷側に供給しながら整流器、充電器によりバッテリの充電を行う。交流入力に停電などの異常が発生した場合、交流スイッチで交流入力を遮断し、バッテリからの直流電力をDC/DCコンバータ、インバータによって交流電力に変換し、出力に供給する。制御部はコントロール部、表示部、インタフェース部から構成されており主回路の制御および、入力異常や装置状態の監視を行っている。

これらの中で前述の特長を可能にした項目について以下に述べる。

主回路では絶縁トランスを削除したトランスレス方式を採用した。絶縁トランスを省略したことにより、装置の小型・軽量化・高効率化が図れた。

図6に双方向動作について示す。主回路の電力変換素子に汎用IGBTモジュールを採用し、これを双方向動作させることにより通常運転時と停電バックアップ運転時に共通の主回路を使用することができる。すなわち同一モジュールが通常運転時はフルブリッジ形整流器および、降圧形の充電器として動作している(図6 (1))。

停電バックアップ運転時にはバッテリからの給電により昇圧形DC/DCコンバータおよび、フルブリッジインバータとして動作する(図6 (2))。

これにより通常運転時も主回路が動作していることになるため、先に述べたように停電発生まで故障がわからないというようなことはなく、装置の信頼性が向上しているとともに共通使用による部品点数の削減を実現した。

主回路部品の選定とレイアウトを適正配置することにより不要サージなどを発生させることなく主回路のスナバ回路を従来機種と比較し、約70%削減することができた。

これらを実施したことにより、装置の高効率化および、部品点数の削減が図れた。さらに、入出力、バッテリ部を除く大半の回路をプリント配線板化することにより生産工数の低減を図った。


4. むすび

19インチラック搭載型のOFF-LINE UPSを省エネルギーという観点より開発し、トランスレス化による装置の小型軽量化、高効率化を図った。また電力変換部を双方向動作させることによる部品削減および信頼性の向上を実現できた。

今回は負荷側のコンピュータ機器が入力力率の改善を行っていることから本装置による力率改善は行わなかったが、市場の多様なニーズに答えるためには汎用性を考慮し入力力率の改善回路は必要であると考える。

今後もコンピュータ機器のダウンサイジング化、ネットワーク化が進み、小容量UPSの需要もさらに増えると同時に低価格化、高効率化を求められるであろう。これらの市場要求に対応した迅速な開発を実施し、ユーザに満足していただく製品を提供していく所存である。

本UPSの開発、製品化に当り、多くの関係者の協力と助言を得たことに感謝する次第である。


関 知昭
1987年入社
パワーシステム事業部 設計第2部
無停電電源装置の開発に従事。


松尾 英昭
1997年入社
パワーシステム事業部 設計第2部
無停電電源装置の開発に従事。


依田 英明
1991年入社
パワーシステム事業部 設計第2部
無停電電源装置の開発に従事。


市川 茂生
1998年入社
パワーシステム事業部 設計第2部
無停電電源装置の開発に従事。





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