SANYO DENKI TECHNICAL REPORT No.9 May-2000
特集

中容量UPS「AMB T3」の開発

森田 慎一
Shinichi Morita

小山 滋哉
Shigeya Koyama

美斉津 利紀
Toshinori Misaidu

高杉 満
Mitsuru Takasugi




1. まえがき

近年の情報通信機器における技術の進歩はめざましく、コンピュータをはじめとする各種電子機器のダウンサイジングが急速に進み、これらに電力を供給する無停電電源装置(以下、「UPS」という。)においても小形軽量化の要求が高まっている。このような背景から、従来の中容量UPSをフルモデルチェンジした「SANUPS 030 AMB」を開発した。この製品は、従来のインバータトランスによる入出力の絶縁にかわり、半導体絶縁方式によるフローティングコンバータ(以下「F-CONV」という。)を使い、小型・軽量化を図るとともに組み立て作業、メンテナンスのしやすさを考慮して開発した。


2. 特長

以下に、本UPSの主な特長を記す。

2.1 小型、軽量化

「AMB」は、入出力の絶縁部に従来の絶縁トランスに代えて、F-CONVを採用したこと、および部品実装の高度化により、20kVAにて従来装置「AMA」と比較した場合、体積で55%、重量で45%、設置面積では40%の低減を実現した。図1に「AMB」の外観を示す。また、20kVA以下の装置では、オフィスへの設置も考慮し、本体底部にキャスターを設け、設置工事、移動などが容易に行える構造とした。

2.2 保守、安全性の向上

UPSには、バッテリ、冷却ファンなど定期交換の必要な部品がある。本UPSでは、このような部品交換や保守の際に必要な部分のみを引き出せるようなユニット構造とし、保守時の利便性を向上させた。また、メンテナンスバイパスBOX(オプション)を使用してUPS本体と分離し、完全な無電圧化を図ったため、作業時の電気的安全性が従来装置よりさらに向上した。

図2にユニットの外観を示す。

2.3 ネットワーク対応

最近のUPSは、従来の接点信号によるインタフェースのみでなく、コンピュータとのさまざまなインタフェースが要求されている。本UPSでは、接点による外部インタフェースに加え、計測・監視・制御など、よりきめ細かな情報を伝達するために、UPSとコンピュータ間で通信を行うシリアルインタフェースを標準装備した。シリアルインタフェースは、コンピュータに専用ソフトウェア「 SAN GUARD」をインストールすることにより、停電時のオートシャットダウンをはじめスケジュール運転、運転状態表示、計測値表示などの機能が使用できる。

さらにオプションでLANインタフェースカードを装着することにより、当社のUPS管理ソフトウェア「 SAN GUARD」によるネットワーク管理ができる。

図3にインタフェース使用時の構成例を示す。

2.4 仕様、オプション

本UPSは入出力3相3線200Vで、容量体系は10kVA〜30kVAである。表1に、20kVAの主な仕様を示す。

このほか、停電バックアップ時間の延長、メンテナンスバイパスBOX、入出力異電圧対応など豊富なオプションを用意している。

表1「AMB」の標準仕様
項目 標準仕様
定格容量 20kVA/16kW
方式 整流器方式 高力率コンバータ
インバータ方式 PWMインバータ
絶縁方式 半導体絶縁方式
交流入力 周波数 50/60Hz±5%
相数 三相3線
電圧 200V±10%
力率 0.95以上
電流歪率 5%以下
交流出力 周波数 50/60Hz
相数 三相3線
電圧 200V
電圧精度 ±2%以下
過渡電圧変動 ±5%以内
電圧歪率 5%以下(100%整流器負荷時)
負荷力率 0.8
蓄電池 バックアップ時間 約10分
種類 小型シール鉛蓄電池
その他 使用環境 周囲温度:0〜40℃ 湿度90%以下
騒音 57dB以下
冷却方式 強制空冷
外形寸法 500(W)×700(D)×1350(H) mm
重量 約460kg


3. 回路構成

図4に本UPSの主回路ブロック図を示す。主回路は、入出力フィルタ、高力率コンバータ、F-CONV、PWMインバータ、出力切換回路などから構成されている。

制御回路は、UPSの動作、制御を行うコントロール部とガイダンス、故障表示、バッテリチェック、計測値表示などの機能を有したインテリジェント部で構成される。

3.1主回路構成

主回路では、絶縁トランスに代えて半導体を使ったF-CONVを新規に採用した。F-CONV部には低オン電圧のトレンチゲートIGBTモジュールを採用することにより、総合効率を85%以上としている。また、高力率コンバータ、PWMインバータ部には、6素子入りのインテリジェントパワーモジュールを採用し、スナバ回路、ドライブ回路などの部品点数を大幅に削減した。

F-CONV部は、高力率コンバータの直流出力とインバータの直流入力を絶縁すると同時に、インバータ入力電圧を定電圧制御している。図5にF-CONV部の回路構成を示す。F-CONV部は、4個のスイッチング素子(IGBT)とリアクトルで構成されている。一次側の2つのスイッチング素子と二次側の2つのスイッチング素子をタイムシェアリングでスイッチングさせることにより、一次、二次間の絶縁を行う。図5の回路において、Tr1とTr2を同時にオンさせると、L1に電流が流れエネルギーが蓄積される。この時、二次側のD1,D2はオフしている。Tr1、Tr2をオフさせると、L1に貯えられたエネルギーがD1、D2を介して二次側C2へ放出される。一次側のIGBTと二次側ダイオードは同時にオンすることがないため、一次、二次間に電流が流れることはなく、絶縁される。

このため、絶縁トランスが不要となり、装置の小型化が可能となった。

本UPSにおいては、二次側のスイッチング素子もIGBTモジュールを使用することにより、電力を双方向に伝達することができるため、負荷急変、出力切換などの過渡時の電圧変動を小さく抑制している。

3.2制御回路構成

本UPSでは、UPSの基本制御、監視機能、計測機能、LCD表示機能など従来からの機能に加え、通信機能を付加した。

UPSをコントロールするシーケンス制御部と、監視、計測、表示、通信などをコントロールするインテリジェント部から構成され、これらを一体化したユニットにすることで、コンパクト化を図った。


4. むすび

以上、「AMB」の概要を紹介した。今後さらにコンピュータのネットワーク化、分散化が進み、UPSの適用範囲が拡大すると予想される。信頼性はもとより、ネットワーク社会への適合、さらには環境への配慮を高め、製品品質、機能向上に努めていく所存である。

なお、本装置の開発、製作にあたり多くの関係者に協力と助言を賜ったことを感謝する次第である。


森田 慎一
1986年入社
パワーシステム事業部 設計第一部
無停電電源装置の開発、設計に従事。


美斉津 利紀
1992年入社
パワーシステム事業部 設計第一部
無停電電源装置の開発、設計に従事。


小山 滋哉
1989年入社
パワーシステム事業部 設計第一部
無停電電源装置の開発、設計に従事。


高杉 満
1988年入社
パワーシステム事業部 設計第一部
無停電電源装置の開発、設計に従事。




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